診療科・部門紹介 TOKYO-SHINAGAWA HOSPITAL

臨床検査科

  • 竹森 利忠
    部長竹森 利忠

基本情報

臨床検査科は、高い品質の臨床検査結果を迅速に医師に提供して診断・治療に貢献することを使命としています。このため365日・24時間体制で外来入院患者様の検査を行い、健診センターでの人間ドックの生理検査・検体検査も受け持っています。また新型コロナウイルス感染症に対応した高感度のPCR検査を迅速に行い、医師の診断治療に有用な情報を提供しています。

これら全ての検査において、適切な品質管理下のもと、更なる検査時間の短縮、品質向上に勤め、疾病構造の変動に対応した新規検査の知識と技術習得に努力してまいりますのでよろしくお願いいたします。

1.病原体遺伝子検査部門

当院で行われているCOVID-19感染者の診断、治療に貢献する目的で、PCR定性検査によりウイルス感染有無の判定を行っています。検査にあたり院内で確立されたBSL-2+検査室は、WHO 実験室バイオセーフティー指針および国立感染症研究所病原体等管理規定に則り管理運営され、高感度かつ均質な検査結果を臨床側に迅速に報告すべく精勤し、内部監査、都および厚生労働省が主催する外部精度管理調査に参加し信頼性の高い検査の品質保証に努めています。当院での検査方法を確立するために多数のRT-PCR試薬の臨床性能比較を行い、現在我々が確立した技術では、1mLぬぐい液中に300−400コピーのウイルスゲノムがあれば陽性と判定されます。

検査を進めるにあたり、呼吸器内科医師と密な連携を維持し、臨床で必要とするきめ細かい検査を施行し、検査結果の情報交換、新規検査技術の査定などを協力して行っています。また検査科では変異ウイルス拡大や感染状況の変動に関する情報を収集し、院外の専門家の教示を受けこれらの外的要因に的確に対応するPCR検査技術を組み立て作業しています。高感度なPCR定性検査は結果取得まで3−4時間を費やすことから、緊急時には15-20分で結果の取得が可能な迅速PCR定性検査キットを運用しています。PCR定性検査と比較し感度が低く、陰性の場合の確定診断にはPCR定性検査が必要となりますが、臨床側の多様なニーズに応えています。

5月に確立した遺伝子検査部門では2020年2月末で約5,650件のPCR検査を行い、また健診センターに協力して計523件の検査を行いました。

2.微生物検査部門

細菌検査

当部門では、臨床症状から細菌感染症が疑われる患者様から提出された検体からの起炎菌の検出は、血液・髄液等を除いて外注委託を行なっています。本来当部門は、菌血症を見逃さないための検査である血液培養検査を行い、菌の増殖が確認された場合、生塗抹標本及びGram染色標本の顕微鏡検査所見から推定される菌の種類を主治医に報告し、初期投与抗菌薬を選択します。推定された菌名の同定のため発育に必要な培地を選択培養後、発育した菌の形態、特性を同定検査で明らかにし、薬剤感受性検査を行い最終的に治療に用いる薬剤を確定しています。

2020年度実績:一般細菌10,652件(血液培養4,388件)、抗酸菌940件

迅速検査

イムノクロマト法による簡易検査キットによる迅速抗原検査。

2019年度実績:迅速抗原検査6,259件(インフルエンザウイルス 2,712件、A群β溶血性レンサ球菌 956件、マイコプラズマ 42件、RSウイルス 9件、hMPV 18件、ロタ/アデノウイルス 5件、C.difficile 毒素 233件、尿中レジオネラ 1,014件、尿中肺炎球菌1,122件)

チーム医療

チーム医療として感染対策チーム(Infection Control Team :ICT)と抗菌薬適正使用支援チーム(Antimicrobial Stewardship Team :AST)に参加しています。感染制御の資格を持つ医師・看護師・薬剤師・臨床検査技師が週1回集まり、微生物検査室から耐性菌に感染した患者様及び血液培養検査陽性者の情報を提供し感染動向の早期把握を行っています。また院内を巡回して適切な感染対策が施行されているか確認作業を行なっています(ICTラウンド)。薬剤師からの広域抗菌薬使用患者の情報を把握し、適切な抗菌薬が院内で適切に使用されているか検討し(ASTカンファレンス)、不適切な場合にはASTから抗菌薬の中止もしくは変更を提案しています。

3.血液検査部門

血液は多くの細胞とタンパク質で構成され、感染症、アレルギーあるいは医原病の外的な要因により、または血液細胞自身の内的要因により血液中の細胞(血球)数や機能の変化、血液凝固系または免疫系に働くタンパク質に異常が起こります。

血液検査部門では、自動血球分析装置を用いて、赤血球、白血球、血小板、網状赤血球数やヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット値、平均赤血球容積(MCV)等多項目の検査を行ない、また出血、血栓性疾患のスクリーニングのために凝固因子能と線溶能の異常を検査し、検査結果報告を行っています。これらの検査から各疾患の急性期や回復期の病状評価や治療の臨床効果の評価を行います。さらにこの過程で、多様な原因を背景とする血液疾患、あるいは血液の異常を伴う重篤な疾患が疑われる場合に、顕微鏡下で染色された細胞の形態観察を介して最終判定を行います。この際必要に応じて血液内科医師が骨髄穿刺を実施し、採取された骨髄液について、有核細胞数・巨核球数を算定し、各種特殊染色(メイギムザ染色、ペルオキシダーゼ染色、鉄染色、エステラーゼ染色、PAS染色)を行い顕鏡下で個々の細胞頻度と形態の観察を行ないます。この検査は造血機能とそれに関する疾患(白血病や骨髄腫、がんの転移など)の診断に不可欠な検査です。血液細胞の判別は非常に熟練を必要とし、定期的に知識・技術の維持向上に努めています。

2020年度実績
・血算:79,988件、凝固線溶:24,984件

4.輸血検査部門

輸血検査部門では、輸血を必要とする患者様に安全な製剤を迅速に届けるための検査を行っています。患者様の血液型と適合しない製剤が輸血されることを防ぐためにABO血液型とRhD血液型検査を行い、製剤に赤血球を壊す抗体の存在を検索する不規則抗体スクリーニング検査、赤血球に溶血誘導する因子の有無を確認する直接クームス検査、さらに血液製剤の適合性を確認する交差適合試験を行っています。不規則抗体スクリーニング検査で陽性反応を示した場合は、原因となる抗体を特定し、適切な製剤を選択するための同定検査・因子検査の実施体制を整えており、ほとんどの症例で当日輸血が可能となっています。輸血は、患者さんの状況次第では時間的な制約がかかりますが、臨床側や血液センターと連携を取りながら検査・製剤の確保を行い、その都度最適な輸血医療の提供に尽力しています。

また当院では、厚生労働省の指針に基づき輸血療法委員会を設置し、定期的に委員会を開催しています。輸血製剤の使用状況や、適正使用などについて、医師・看護師・薬剤師・事務員とともに情報の共有と意見交換を行っています。

5.一般検査部門

尿検査をはじめとして便潜血検査や胸水・腹水などの体腔液検査を実施しています。尿検査から得られる情報は多く、腎臓、尿管や膀胱の状態、さらに糖尿病や肝臓・胆嚢の疾患を推測することが可能で、医師が血液検査等の結果と併せて複合的に評価し、診断をするため必須の検査です。

尿は定性と沈渣の検査をそれぞれ自動分析機で行っています。定性検査では、尿試験紙に尿を滴下し、試験紙にしみ込んだ試薬との化学反応による色調の変化を測定して糖やタンパク、潜血の量を調べます。沈渣検査では、赤血球や白血球などの有形成分を、フローサイトメトリー法を原理とした機器により判別・計測し異常成分の出現が疑われるものや沈渣成分が多いものなどは遠心して沈渣成分を顕微鏡で観察しています。

便潜血検査では、消化管出血により便に混在した微量の血液を検出し、ヒト赤血球中のヘモグロビンに対する特異的な抗ヒトヘモグロビン抗体を用いる特異度の高い検査です。大腸癌のスクリーニング検査で用いられ、早期の段階で発見が可能であるため健診で広く実施されています。

体腔液検査は、胸水や腹水など体腔内に貯留した液体中に出現する様々な細胞を顕微鏡下で観察し、診断や治療効果の判定に非常に有用です。

2020年度実績
・尿検査:44,230件、便検査:16,744件

6.生化学検査部門

生化学検査部門では患者様から採取した検体(血液、尿、脊髄液など)について、肝機能・腎機能・心機能・内分泌代謝等に関わるタンパク質、脂質、酵素、電解質などの75項目にわたる検査項目を自動分析機で測定しています。測定値を健常人集団の基準値と比較する事によって多岐に渡る疾患の病因・病態の特定及び診断、治療の評価に貢献しています。

臨床検査科では採血後60分以内に臨床側へ結果報告を行い(免疫項目は90~120分)、また、検査結果に緊急異常値(パニック値)が認められた場合には速やかに臨床医に連絡しています。このように診察時に医師が患者様の状態をいち早く把握し、迅速な治療対応を行えるよう対応しています。

作業にあたり最も重要な作業は検査の精度管理です。生化学部門では朝、昼、夜勤引継ぎ前の3回コントロール血清の測定を介して内部精度管理を行い、さらに日本臨床検査技師会やメーカーが主催する外部精度管理調査に参加し信頼性の高い検査の品質保証に努めています。

さらに重要事項として新たな社会情勢への対応、技術の進歩、あるいは臨床側の要望に対応した新たな検査の導入です。導入に際して部門内で試薬の検討や情報収集を行い、院内検査導入を適宜行っています。例えば、コロナ抗体検査、心不全の補助診断法となるNT-pro BNP測定法等の確立が挙げられます。また外注検査依頼数が100件を超える項目に関して当院の内部検査導入案内を行っています。今後多項目の検査結果から有意義な情報を解読するためにAI(artificial intelligence)の活用が重要となることを認識しています。

2020年度実績
・生化学:104,739件、感染症(HIV HCV TP RPR HBsAg):15,102件

7.生理機能検査部門

病院部門と健診部門での検査を担当しています。超音波認定検査士(腹部・心臓・血管・体表)・血管診療技師取得技師が多数所属し、当部の臨床検査は高度な専門家集団により病院理念に添い、患者様の診断・治療に必要な正確な検査結果を迅速に報告しています。

2020年度の病院部門は総延べ検査数29282件、健診部門は総延べ検査数34307件の検査を行いました。

病院部門での検査は以下に分別されます。

循環器系検査


年間延べ検査数(健診を含む):23783件

検査項目:心電図・ホルター心電図・血圧脈波検査(ABI)・皮膚灌流圧検査(SPP)など

心電図は心臓の活動により生じた電気的変動を波形として記録します。心臓疾患(不整脈・心肥大・心筋梗塞・狭心症)などの診断目的、手術前や入院時(前)検査のために行います。ホルター心電図は24時間小さな機器を胸に装着して1日の心電図変化を見る検査です。血圧脈波検査 (ABI)は腕と足首の血圧を同時に測定し下肢の動脈の狭窄・閉塞・硬さを調べます, 皮膚灌流圧検査(SPP, skin perfusion pressure)は皮膚内の毛細血管の血流を評価し、手足の血管領域の診療のスクリーニングに役立ちます。

呼吸器系検査


年間延べ検査数(健診を含む):10385件

検査項目:肺活量/努力性肺活量・肺拡散能・機能的残気量・薬剤負荷・呼気NO

呼吸器(肺、気管支、肺胞)は生命に必要な酸素を体に取り込む重要な器官で、その働きが正常に作動しているかを知るために検査を行なっています。また、全身麻酔での手術で必要な呼吸管理の判定のためにも検査を行います。

一般的な検査では肺活量(肺に入る空気の量)、努力性肺活量(吸引した空気の1秒間排出量)を測定し肺の換気能力を調べます。さらに精密検査として肺拡散能(肺から血液中への酸素の取り込み効率)、機能的残気量(安静呼吸時での呼吸の余力)を測定し、呼吸機能障害の有無を検査します。また喘息の症状や気道の炎症状態の評価を呼気中一酸化窒素(NO)の濃度の測定と、喘息の診断、重症度や治療効果の判定に必要な薬剤負荷試験を行なっています。

神経機能系検査


年間延べ検査数:171件

検査項目:脳波・神経生理検査・脳誘発電位・終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)検査など

脳波検査は脳の微弱な自発的電気的活動を電極でとらえ脳の働きを調べます。てんかんの診断・病型判定、けいれんや意識障害の評価、器質性脳障害(脳腫瘍・脳血管障害・頭部外傷による脳損傷など)や睡眠異常の診断に用いられます。この他終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)検査も行っています。

神経伝導検査では、活動時筋肉が収縮し、筋肉の細胞から発生する活動電位を記録し評価します。検査は、手足のしびれ、運動麻痺、筋力低下の場合に施行し, 手足の末梢神経障害の有無、程度、部位を評価します。脳誘発電位検査は感覚神経に与えた電気的あるいは機械的な刺激により誘発される反応を記録します。末梢神経から脳幹・大脳皮質に至る神経路の機能を見る検査です。

超音波検査


年間延べ検査数(健診を含む):15510件

検査項目:腹部・心臓・乳腺・甲状腺・唾液腺・皮膚・頸動脈・腎動脈・下肢動脈・下肢静脈・リンパ浮腫・シャント(透析患者)など

超音波は臓器や組織の境界で反射します。この反射波を画像に転換して臓器組織の状態を解読する検査です。腹部臓器(肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓、腎臓、膀胱、前立腺、子宮)や内分泌臓器 (乳腺・甲状腺・唾液腺)での良性腫瘤や悪性腫瘍の有無、炎症や障害、各臓器固有に発症する異常(たとえば、胆石、腎結石)の診断が可能です。循環器系(心臓・動脈・静脈・リンパ)の検査では心不全・心筋梗塞や心臓肥大・弁膜症や先天性疾患の有無・動脈硬化や動脈瘤・静脈血栓症・リンパ浮腫などの診断することができます。

耳鼻科検査


聴力をはじめとしてめまいや平衡機能障害の検査を行います。

<聴力検査>

年間延べ検査数(健診を含む):13740件

検査項目:純音聴力検査・言語聴力検査・内耳機能検査・ティンパメトリー検査・耳小骨筋反射検査・補聴器適合検査など

防音室でヘッドホンを両目:純耳にあて、125―8,000ヘルツまでの7種類の異なる音の聴力を左右別々に検査します。難聴の場合、音の入る外耳道、音を伝える装置(鼓膜など)、音の振動を電気信号に変換する装置(内耳蝸牛)、及び電気信号の脳への受信に関わる聴神経、中枢神経のいずれかの障害を考えます。

<めまいの検査 平衡機能検査>

検査項目:重心動揺検査・眼振検査・視刺激検査など

目眩は内耳の病気、頚部の障害、脳腫瘍や脳出血など、血液の病気、血圧の変動など多くの原因により誘引されます。検査科では内耳や視覚、知覚の異常を検討する重心動揺検査、及び内耳系、中枢神経系の異常の有無を観察する眼振という眼の特徴的な運動を検査します。

8.病理検査部門
9.その他情報

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